※ 一部改正あり[道路運送法の一部を改正する法律 H28.12.20施行により]  

 

みなさん、こんにちは!

 

前回の最後に、「名義の利用、事業の貸渡し」も、「例外なし」の禁止条文のひとつです。というお話しをしました。基本はこれでオーケーです。過去問では、たとえば、

 

例題 タクシー事業者は、その名義を他人に当該事業のために利用させることも貸し渡すことも

  できません。

 

「例外なし」条文ですから、正解はですね。

 

次に出す例題は、私が知る範囲の過去問では、まだ見たことがないので実際の試験対策ではないですが、今回お話ししていく個人タクシーの特殊性を理解する上で考えてみたいと思います。

 

例題 個人タクシー事業者は、いかなる方法を以ってしても、その名義を他人に当該事業のために利

      用させることはできません。

 

正解は、❌になります。ひとつ前の例題と違うのは、主語がタクシー事業者ではなく個人タクシー事業者になっていること、そして「いかなる方法を以ってしても」という語句が入っていることです。聞いたことがある方もいると思いますが、個人タクシーは「代務運転」という制度を利用できる「特例」があります。ひとり経営という特殊性を考慮して、病気などで長期に営業不能になったときに、期間を定めて、一定の資格を満たす人に「名義を利用させて」代わりに営業してもらえるというものです。

「一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシー)の許可期限の更新等の取扱いについて」という通達の中で、次の様な承認方法で「名義の利用、事業の貸渡し禁止」条文の趣旨を反映した個人タクシーの許可に付した条件を変更して承認するとしています。

 

通達

代務運転者を使用しようとする事業者からの申請に基づいて、許可等に付された条件のうち

「他人に当該事業用自動車を営業のために運転させてはならない」旨の条件を一定期間変更

(以下「代務運転に係る許可条件変更」という。)することにより行うこととする。(以下、省略)

 

個人タクシーは、法人タクシーに比べて、そのひとり経営という特殊性から、いくつか認められている「特例」があります。しかし、実は個人タクシーという制度自体は、道路運送法などの法律では規定されていません。法律できちんと規定して欲しいのが業界の長年の要望ですが、残念ながら未だに通達で認められているだけの制度なのです。ですから、道路運送法は基本的に一般のタクシー事業者を想定して書かれている法律なので、個人タクシーについての「特例」は、特権的な意味合いではなく、一般のタクシー事業者と同じ基準で規定すると、個人タクシーには厳しい事項について、お許しをいただく的な意味合いの「特例」なのです。ここをしっかり理解して、数少ない「特例」をきちんと覚えることで、前回の「例外なし」条文と同じように間違いなく解けるようになります。

 

前置きが長くなりましたが、この点の押えが弱いと、とても迷う人が多い問題になります。そして、出題者側からすると、比較的難易度の高いものを作りやすい問題なのです。よくある簡単な問題は、次のようなものです。

 

例題 使用している事業用自動車が故障等により使用できなくなった場合、個人タクシ事業者ーに限っては、その事業の特殊性に鑑み、一時的に自家用自動車を使用して、事業を行ってもよいとされています。

 

はい、試験勉強していなくても常識的に❌だと分かる問題ですね。この例題のように「個人タクシー事業者に限っては、〜できます」という出題は、❌問題がほとんどです。でも、数学のように公式として、「個人タクシー事業者に限っては〜ときたら❌!」 と決定できないのが文章題のつらいところですね。ここで、次のような例題をみてみましょう。

 

例題 個人タクシー事業者に限っては、事業を休止した日数が30日を超えなければ、運転日報に

  その旨を明記することにより、事業の休止届を出す必要はありません。

 

はい、もしさっきの公式が通用するなら❌のはずですね。でも、正解はなのです。この事業の休止届に関する「特例」も、数少ない個人タクシーの「特例」のひとつです。

 

もし、みなさんの会社が何かの理由で事業を休止せざるを得なくなったらどうなりますか? もちろん雇用されているみなさんも仕事が出来なくなり大変ですが、みなさんの会社をよく利用してくれるお客様や付け待ちしている駅やホテルや病院などでいきなりみなさんの会社分、台数が少なくなったら「旅客の利便」を損ないますよね。なので法律上は、「事業を休止する少なくとも7日前に、営業所その他の事業所において公衆に見やすいように掲示」(道路運送法 第38条第1項第4号とリンク先が旅客自動車運送事業運輸規則 第7条)が必要で、事業を休止するときは、「その日30日前までに国土交通大臣に届け出なければならない(H28.12.20より事後から事前届出に改正)」(道路運送法 第38条)となります。
 しかし、個人タクシーの場合は、定めた休日以外に、例えばインフルエンザにかかって一週間近く仕事が出来なくなったり、事業用自動車に数週間の修理が必要な故障が起きてしまったときなど、全て事前の掲示や休止届を出さなければならなくてはとても大変ですね。そういう個人営業の特殊性が考慮されて、30日以内の休止であれば、運転日報にその旨を明記すれば良いという「特例」を設けてもらっているのです。これは、先に挙げた「許可期限の更新等の取扱いについて」の通達に書かれています。ただし、それを超える場合は、当然、長期休業が想定される事態なので、「休止する旨を少なくとも7日前に掲示」と「休止届を提出」(法改正により、個人タクシーも30日を超えて休止することが予見できる場合は、原則、事前に休止届を出すことが前提)することになります。

ここで、例題です。

 

例題 個人タクシー事業者に限っては、事業を休止する日数が30日を超える場合は、事業の休止届を提出する必要がありますが、事前に休止する旨の掲示をする必要はありません。

 

正解は、❌です。ここでは、2つの点が問われていますね。ひとつは、休止が30日を超えるので個人タクシーの「特例」も認められず休止届を出す必要があるということ。これは今説明してきたのでいいですね。もうひとつは、休止する旨の掲示が事前に必要かどうかです。はい、休止届に関する「特例」はあくまで休止する日数についてのみなので、事前掲示は、法律で規定されている通り個人タクシーも必要になります。


 この様に、何が「特例」として認められていて、何が認められていていないのかハッキリ覚えておかないと、ひっかかりますが、幸運なことに、その「特例」はほんの少ししかないので、それをしっかり覚えてしまえば、今日からはサービス問題に思えるようになります。

では、その「特例」を挙げてみます。


 ① 事業を休止した日数が30日以内であれば、運転日報にその旨を明記することにより、

 事業の休止届を出す必要はない。

 

 ② 代務運転の申請をして承認されれば、一定期間、他人に名義を利用させることができる。

 

 はい、この2点のみです。そう、長々とお話ししてきましたが、この2点のみしっかり「個人タクシーの特例」と覚えておけば、次のような例題は、迷うことなく×と答えられるようになります。

 

 例題 旅客自動車運送事業者は、事業用自動車の使用の本拠ごとに、自動車の点検及び清掃のための施設を設けなければなりませんが、個人タクシー事業者は除外されます。

 

 例題 個人タクシー事業者に限っては、旅客自動車運送事業等報告規則に定める輸送実績報告書の提出は必要ですが、自営業者として確定申告を行うので、事業報告書の提出は必要ありません。

 

 今回見て来たように、届出を「事前にするか事後にするか」というのは、出題者からすると、とて

もひっかけ問題を作りやすい訳です。次回は、この「事前か事後か」をテーマにお話しする予定です。

 

 今回も、ご覧いただきありがとうございました。