みなさん、こんにちは!

 

 お客様を安全、確実、迅速に目的地までお届けして、運賃・料金をいただく... これが我々の仕事ですが、お客様との距離が近い接客業をしていると、「十人十色で、実にいろんな人がいるなぁ~」と日々感じます。これまでの、「旅客」に対して考えてきた回では、「輸送の安全や旅客の利便を確保しなければならない。」「苦情を受けたときや、事故を起こしたときは、次のようなことをしなければならない。」など、「旅客」に対して「~しなければならない」という観点のものでした。そして、我々は基本的には「乗車拒否」、法令の用語で言うと「運送の引受の拒絶」を「してはならない」ことになっています。例えば、街中で手を挙げられて、「見た目が怖そう」とか「外国人で日本語が分からなそう」などの理由で乗車拒否することはできませんよね。でも、例外なくすべて「運送を引き受ける義務」はありません。今回考えていく法令には、「運送の引受を拒絶」してもよい場合がきちんと定められています。

 近年、ドライブレコーダーの普及により、問題を引き起こす「旅客」のセンセーショナルな映像が、一般のニュース等で放送されることがあります。ほとんどの例が犯罪的で、即刻、「運送の引受を拒絶」していい例ばかりです。涙ぐましいぐらいに必死に対応する乗務員の姿が放送される度、きちんと「運送の引受義務」を理解していれば、「運送の継続を拒絶」し、乗務員自らの安全を第一に、逃げてから警察に通報するなど適切な処置をしていいのにと思います。

 では、まず関連法令をすべて挙げてみます。ここに書き出すと長くなるので、法令名と条文のみ示します。テキストの該当ページを参照しながら読み進めてくださいね。

 

 ・道路運送法 第13(運送引受義務)

 ・運送約款

 ・旅客自動車運送事業運輸規則

 第13(運送の引受け及び継続の拒絶)

    第49(乗務員) 第4

    第52(物品の持込制限)

 

 基本は、道路運送法第13条です。「運送の引受けを拒絶」してもよい場合として、第1項第1号~第6号までの6項目が挙げられていますね。その最後の6項目目を、省令の旅客自動車運送事業運輸規則第13条でより具体的に定めています。運送約款は、この二つを「旅客」向けの言葉に焼き直したものですから、内容は同じです。

 そして、省令の中でさらにリンクして、第49条と第52条についても、そのような事項に該当する場合は拒絶してよいとされています。まずは、この法令の構造を押さえて、一通り、条文を読んでみてください。

 

 どうでしょう? 読み進める中で具体的な「付添人を伴わない重病者」とか「100グラムを超える玩具用煙火」とか具体的なものは拒絶してよい内容として理解しやすいと思います。では、基本の道路運送法第13条の第1項第1号、「運送約款によらないものであるとき」はどうでしょう? なかなか具体的なイメージは湧きにくいと思います。世の中の事象を法令で全て綿密に規定しようと思っても、「想定外」のことは起こりますよね。ですから、「旅客の運送」について綿密に定められた「運送約款」でも想定できないような「運送の申込み」があった場合は拒絶してもよいということです。万一、「運送を拒絶」したことによって裁判になったときに、この1項目があるとないとでは裁判の進行がかなり違ってくるはずです。

 第2号の「運送に適する設備がないとき」は、セダン型の車でスキーキャリアがないのに、スキーを載せて欲しいなどと具体的なイメージが湧くと思います。第3号の「申込者から特別の負担を求められたとき」は、「高速代はサービスして」とか「独り者で、そんなに量ないから何往復かして引越し荷物運んで」と引越し業者代わりにされたりとか、なかなかありそうでないことでも「特別の負担」と抽象的な条文があることで、具体的には列挙しにくい「拒絶」項目になると考えてください。

 

そういう抽象的な条文の最たるものが次の第4号「法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するもの」ですね。日本は法治国家ですから、最高法規の憲法やその他の法令の規定や、略して「公序良俗」に反するものは「拒絶」してもよいわけです。これには、まさしくはじめの方で書いたドライブレコーダーのニュース映像で流れる「犯罪的」なものも含まれますね。乗務員に暴力を振るうなど、刑法に抵触する犯罪です。そういう「旅客」に対しては、その時点で「運送の引受義務」に該当する「旅客」ではなくなるので、毅然として「運送の引受けを拒絶」して、必要あらば通報等の適切な処置をとればよいのです。

 

では、具体的な問題をみてみましょう。

 

題1 個人タクシー事業者は、夜間、繁華街において、付近に他のタクシーがいる場合に限って、近距離の

運送の申し込みを断ることができます。

 

 法令に関係なく、常識で×と分かる問題ですが、今まで見てきた「拒絶」してもよい項目にはもちろんないし、抽象的な「特別の負担」や「公序良俗に反するもの」であることなどにも該当しませんね。全く、事業者の都合で「乗車拒否」などあり得ないことです。

 

 例題2 事業者は、行き先を告げることもできない泥酔者であって、他の旅客の迷惑となるおそれのある者に

対しても運送の引受けを拒絶することはできません。

 

 正解は×ですね。省令で具体的に「拒絶」できる条件に該当します。

 

 例題3 身体障害者補助犬法(平成14年法律第49号)に規定する身体障害者補助犬と同等の能力を有すると

認められる犬をタクシー車内に持ち込む旅客に対しては、運送の引受けを拒絶することができます。

 

 省令第52(物品の持込制限)で「動物」は、持ち込みを禁止されていますが。括弧付きで、身体障害者補助犬と同等の能力を有する犬は認められているので、正解は×です。この括弧内には、他に「愛玩用の小動物」も拒絶してはならないとなっているので、同時に覚えてください。

 

 例題4 一般乗用旅客自動車運送事業者は、1キログラムの玩具用の花火をタクシー車内に持ち込む旅客

    に対しては、運送の引受けを拒絶することができます。

 

 これは、暗記していないと解けないですね。省令第52(物品の持込制限)で、「100グラムを超える玩具用煙火」となっていますから「1キログラム」はオーバーで「拒絶」できます。正解は〇。出題頻度は低いですが、この物品の持込制限の数量を問う問題もたまに出ます。よく出るのは、この「100グラムの玩具用煙火」「500グラムを超えるマッチ」などです。他の別表の数量まで暗記しようと思うと大変ですが、何度か言ってきたように、まずは細かいところにとらわれず、基本の重要事項を全て暗記しましょう。そして、余裕があれば細かいところまでがんばってみてください。

 

 さて、今回までで、法令問題で問われる重要事項はほぼ押さえて来ました。まだ、触れていない事項はいくつかあるのですが、そのひとつに「タクシー乗務員として禁止されている行為」「タクシー運転者として遵守しなければならない事項」、法令でいうと、旅客自動車運送事業運輸規則第49(乗務員)・第50(運転者)があります。これは条文を読んでもらえば分かるように、全て「常識的」または運転免許所持者であれば分かっていなければならないことばかりです。例えば「タクシー乗務員は、旅客を運送中であっても、旅客の承諾を得た場合には、タクシー車内で喫煙してもよいと規定されています。」などといった問題に〇と答えるようでは、個人タクシーを目指す資格があるか甚だ疑わしいので敢えて取り上げません。ただ一点のみ第50条の第1項第7号「事業用自動車の故障等により踏切内で運行不能となったときは、速やかに旅客を誘導して退避させるとともに、列車に対し適切な防護措置をとること。」は普通免許の試験では問われないことなので、「旅客を誘導、退避、列車に対する防護措置」は、問題文中どれがひとつ抜けても×になりますので、しっかり覚えましょう。

 

 次回は、その他に法令問題で問われる、車内掲示・応急用具や地図の備付け・回送板の掲出など、細々した問題を問題演習形式でみていく予定です。

 

 

 今回も、ご覧いただきありがとうございました。