みなさん、こんにちは! 

 

 前回までのテーマ「旅客に対して」に関して、重要な「運送の引受け義務と拒絶」いわゆる「乗車拒否」ができるかどうかについて触れていませんが、もう少し後の回で他の用語と関連して考える予定でいます。

 

 さて、ここまでは運送事業を経営する上で実務(旅客の輸送)を中心に必要な知識を考えてきた訳ですが、振り返ってみれば「事業計画」以外は、「な~んだ、出番の度にやってることばかりか」となります。入社したときに登録センターで講習や試験を受け、先輩に実務指導を受けたあと独り立ちされ、今までがんばってきた方がほとんどだと思いますが、ここまでの回は、そこで教わってきたことが法令ではどの様に定められているのかを見てきたことになりますね。

 

 今回は、みなさんはノータッチで会社がやってくれている部分の問題です。といっても、書類上は「事業報告書」と「輸送実績報告書」、この2つの報告書の内容と提出期限を覚えるだけです。「旅客自動車運送事業等報告規則」という省令に定められています。とても簡単なのですが、意外に講習会をやっていると、なかなか理解出来ない人がいたり間違える人が多いのが不思議です。やはり実体験がない机上だけの事柄はなかなか覚えにくいのかもしれません。

 

 タイトルと逆順になりますが、「輸送実績報告書」の方が理解し易いでしょう。テキストの実務必携に載っている報告書のひな型(該当省令の後ろのページに掲載)をみてみましょう。1枚に報告すべき項目がまとまっていますね。1年度分を集計した、実働日数、走行距離や運送回数、実車率などの輸送に関わる項目が中心で、事故の件数等を書く欄もありますね。つまり、みなさんが出番の度に書く乗務記録の輸送に関わる部分の1年度分を報告するものなのです。この報告書をまとめる期間は「日本的な年度(前年4月1日から3月31日)」なので、意識的に「1年度分」と書いて来ました。そして、提出期限は5月31日までです。

 次に「事業報告書」を考えてみましょう。これは提出期間や中身は、ほぼ確定申告と一緒です。ただし、個人タクシーという個人事業主として1年間仕事をした後には、当然、税務署へ確定申告をすることになりますが、この「事業報告書」は似た様なものといっても、納税のための申告ではなく、各営業区域の地方運輸局長などに「経営状況」を報告するものです。他の許認可の必要のない自営業は確定申告のみでいい訳ですが、みなさんが目指しているのは行政庁の「許認可」が必要な事業なので、「許認可」をいただいた行政庁に対して報告する義務がある訳です。この省令の第2条第2項に具体的な「事業報告書」の中身が挙げられています。この中身について聞かれることはほとんどありませんが、財務状況の報告項目が中心です。

 まず報告する期間は「毎事業年度」となっています。個人タクシーの場合の「事業年度」は、1月1日~12月31日だと覚えて下さい。先に見た「輸送実績報告書」の期間は、省令内に「前年4月1日~331日」と明記されていますが、「事業報告書」の期間は「毎事業年度」としか書かれていません。これは、法人である会社の年度は1年以内であれば決算日を決められるので、その期間を「事業年度」とすることができるので期間を限定していないのです。しかし、個人事業主は1月1日~12月31日以外の期間で「事業年度」を決めることは法律で許されていないので、自動的にその期間になる訳です。そして、提出期限は、確定申告の事業年度の約74日後の315日より少し余裕のある「毎事業年度の経過後100日以内」となっています。

  この2つの報告書は、今、みなさんが出しているのではなく会社がまとめて報告していますが、これを開業後は自分で提出することになります。なかなかこの報告書を作成するのは大変な作業です。しかし、開業後、ほとんどの方は協同組合的な団体に加入予定だと思います。そこで報告書の基礎になるデータを提出すれば、実際は所属団体が代わりに報告してくれるのでご安心ください。ここで、例題をみてみましょう。

 

(平成287月 関東運輸局)

 例題1 旅客自動車運送事業者は、事業年度の経過後、100日以内に「輸送実績報告書」の提出が

   義務づけられています。

 

(解説)

 基本的な問題です。提出期限が「事業報告書」と混同していなければ、すぐ×と答えられますね。

 

(平成283月 北海道運輸局)

 例題2 一般旅客自動車運送事業者は、旅客自動車運送事業等報告規則の規定により「事業報

   告書」及び「輸送実績報告書」を提出しなければなりませんが、個人タクシー事業者は「輸送実

   績報告書」のみ提出すればよいこととなっています。 

 

(解説)

 「個人タクシーに限っては」の特例はなく、2つとも報告しなければなりませんから、×ですね。

 

(平成2711月 中部運輸局)

 例題3 旅客自動車運送事業等報告規則に定める実車率算出に係る算式は「走行キロ×実車キロ

   ×100」です。

 

(解説)

 これもよく出る問題です。乗務記録で「実車率」を計算して書かせる会社は少ないと思うので、間違える人が時々いますが、「50キロ先までお客様を運送して、出発地まで空車で戻ったので往復100キロ走りました。実車率は何%ですか?」と具体的に聞けば、ほぼ全員が「実車率は50%」と答えてくれます。正解の式は「実車キロ÷走行キロ×100」なので、×ですね。この式は、先に見た「輸送実績報告書」のひな型の備考に書かれています。

 

 (平成27年 11月 近畿運輸局)

 例題4 旅客自動車運送事業等報告規則の規定では、輸送実績報告書の事故件数については、

   自動車事故報告規則に基づく自動車事故報告書を提出すれば記載する必要はありません。 

 

(解説)

 これも、時々出題される少しひねりを効かせた問題です。まず、先ほどのひな型には「輸送実績報告書」の事故件数について「交通事故件数」「重大事故件数」「死者数」「負傷者数」と具体的に報告する欄があります。そして前の回で「自動車事故報告規則」を学習した様に、こちらは厳密で細かい重大事故に関する報告書を提出する訳ですが、これを提出したからといって、「輸送実績報告書」の事故件数を省略できるなどといった但し書きはどこにもないので、×になります。

 

 ※「事業報告書」     期間 = 1月1日~12月31日 提出期限 100日以内 内容 経営状況 

 ※「輸送実績報告書」   期間 = 前年4月1日~3月31日  提出期限 5月31日 内容 輸送実績・事故件数

 

 各報告書の期間・提出期限・内容の違いをしっかり覚えれば、もうこの先はサービス問題ですね。

  さて、今回まで考えてきたのは、全て「旅客を運送」することについて大元の「道路運送法」とそれを具体化する省令や通達についてでした。まだまだ「道路運送」について触れなければならないテーマはあるのですが、次回からは、もう一つの柱、これがなくては仕事ができない「自動車」について、どのように法令で定められているのか考えていく予定です。

 今回もご覧いただきありがとうございました。