みなさん、こんにちは!

 

 今回も引き続き「旅客」に対する問題をみてみましょう。その中でも、誰もが起こしたくない「事故」や、受けたくない「苦情」があった場合について考えてみます。「事故の記録の保存期間」についての問題は、第2回で学んだので省略します。それ以外の「事故」についての問題は、次の例題の様に、自動車免許を所持していてる人なら常識的に解けるものがほとんどです。

 

(平成283月 東北運輸局)

 例題1 事業者は、天災その他の事故により、旅客が重傷を負ったときは、すみやかに、その旨を

   家族に通知した場合、旅客を保護する必要はありません。

 

正解は当然✕ですね。根拠条文は下に挙げた第19条ですが、「事故時の処置」ということで、前条の第18条も挙げておきます。解説は必要ないと思いますが、この2つの条文は穴埋めで聞かれる頻度が高いので完璧に暗記しましょう。

 

 道路運送法

(事故の場合の処置)

第十八条  旅客自動車運送事業者は、事業用自動車の運行を中断したときは、当該自動車に乗車している旅客のために、次の各号に掲げる事項に関して適切な処置をしなければならない。

  旅客の運送を継続すること。
  旅客を出発地まで送還すること。
  前各号に掲げるもののほか、旅客を保護すること。

 

(事故による死傷者に関する処置)
第十九条  旅客自動車運送事業者は、天災その他の事故により、旅客が死亡し、又は負傷したときは、次の各号に掲げる事項を実施しなければならない。

  死傷者のあるときは、すみやかに応急手当その他の必要な措置を講ずること。
  死者又は重傷者のあるときは、すみやかに、その旨を家族に通知すること。
  遺留品を保管すること。
  前各号に掲げるもののほか、死傷者を保護すること。

 

 

 さて、「事故」に関しての問題がこれらの視点からだけなら難しくありませんが、次の様な問題に関しては勉強が必要になってきます。

 

  例題2 個人タクシー事業者は、軽微な事故を起こした場合でも、自動車事故報告規則に

    基づく報告が必要です。

 

 省令名が「自動車事故~」なので、普通の事故についての報告規則のこと? と初めは勘違いする人がいて、○と答えてしまいますが、正解は×です。一般の「事故」は記録を3年間保存する義務があるのと、輸送実績報告書の項目の一つとして「事故件数」を報告することが必要ですが「自動車事故報告規則」に基づく報告は必要ありません。 

 では、テキストの「自動車事故報告規則」のページを開いていください。 この省令でいう「自動車事故」とは、読めば分かる通り「重大事故」のことです。「重大事故」の定義は1~15号まであり、全部覚えるに越したことはありませんが、特によく出題される次の号をまずはしっかり覚えましょう。箇条書きにしてみると、

     1号 転覆・転落・火災、鉄道車両と衝突、接触

 2号 10台以上の衝突、接触

 3号 死者・重傷者あり

 4号 10人以上の負傷者

 5号 危険物の飛散、漏えい

 8号 酒気帯び、無免許、麻薬等運転

 9号 運転者の疾病

 11号 自動車の装置の故障

 

  これらに起因する事故や事故によって生じてしまったこれらの犠牲者がある場合は、必ずこの省令に基づく報告が必要です。では、例題です。

 (平成28 7 近畿運輸局)

  例題3 個人タクシー事業者は、タクシーを運転中に自動車が転覆・転落する事故を引

    き起 こした場合、3ヶ月以内に自動車事故報告書を提出しなければなりません。

 

 第1号に該当する事故なので、まず報告は必要ですね。でも「3ケ月以内」とあるのがひっかかります。「事前か事後か」の回のまとめを示したところで、この省令の期限も触れているので既に暗記している人はすぐ間違いに気づいたと思います。報告書の提出期限は次の第3条に「30日以内に(中略)3通を運輸管理部長又は運輸支局長を経由して、国土交通大臣に提出」となっているので、正解は×です。

 

 (平成2711月 中部運輸局)

  例題4 個人タクシー事業者が業務中、旅客を乗車させていない時に自動車が転覆した

    場合には、自動車事故報告規則の規定に基づく報告書の提出を行わなくてもかまいません。

 

 これも第1号に該当する事故についての出題ですが、「旅客」が乗っていないときも報告義務があるかどうかの出題です。これも第3条(報告書の提出)を読むと、どこにも「旅客」について触れられていないので、「旅客」の有無で「報告書の提出」の有無はありません。よって正解は×になります。

 

(平成283月 沖縄運輸局)

例題5 自動車事故報告規則の規定では、事業者は、自動車が転覆・転落し死者又は

  重傷者 を生じる事故を引き起こした場合には、30日以内に自動車事故報告書を提

  出するほか、電話等の適当な方法によって48時間以内にその事故の概要を営業

  所の位置を管轄する運輸支局長に速報しなければならないこととなっています。

 

 これは、第4条(速報)に関する問題です。これも既に「速報は24時間以内」と暗記している人は、すぐ48時間以内が違うと分かったと思います。正解は×です。ただ、単に「24時間以内」となっていると全ての問題が〇かというと、そうではないのが厄介なところです。第4条にあるように、重大事故のうち、より重大で深刻な事故については「速報」が必要なので、速報要件に満たない事故で聞かれた場合は「24時間以内に速報」は×になり、「30日以内に報告」でよい、ということになります。速報要件をまとめると、

 

 

 1号 転覆・転落・火災、鉄道車両と衝突、接触

3号 1人以上の死者・5人以上の重傷者、旅客1人以上の重傷者

4号 10人以上の負傷者

5号 危険物の飛散、漏えい(1号に起因したものに限る)

8号 酒気帯び運転

 

 かなり以前に1回個人タクシーにチャレンジして願い叶わず、再チャレンジを目指している方は、以前勉強されたときと何か違う、こんなに要件が細かかったっけ? と思われることでしょう。私が勉強したときも、第2条の定義ももっと少ない項目でしたし、速報要件ももっと簡潔でした。しかし、近年ご存知の様に、様々な重大事故の増加に伴い、この省令はかなり改正されました。なので、大変ですが今まで見てきた、よく出題される重大事故と速報要件、報告書の提出期限はしっかり覚えましょう。

 また、この省令については、次の様なイレギュラーな出題もたまにされます。

 

 (平成277月 北陸信越運輸局)

例題6 自動車事故報告規則の規定に基づく報告書については、事故に対する弁明書を

  添付することになっています。

 

 正解は×です。この省令の中で「弁明書」の添付義務はどこにも書かれていません。この重大事故に関して、テキストでは省令の次のページに本物の「自動車事故報告書」のひな型が載っているので見てみましょう。「弁明書」などという生易しいものではない、非常に厳密な状況報告をしなければならないものだと分かります。そして、ひな型の次のページには、より細かな各用語に対する注釈が掲載されています。この中でたまに出題されるのは、(6)の5「踏切 当該自動車が踏切において、鉄道車両と衝突し、又は接触したとき。」の部分です。「踏切」内のどのような事故が重大事故に該当するかの注釈です。あくまで「鉄道車両と衝突、接触」したときであって、例えば「踏切内で他の自動車に衝突」した場合は、「自動車事故報告規則」に規定する「重大事故」には該当しないのです。ごく稀に過去には、「転覆 35度以上傾斜」や「転落 落差0.5メートル」が出題されたこともありますが、まずは大元の定義と報告期限と速報要件、この3つをしっかり覚えましょう。

 「事故」について、大分長くなりましたが、「輸送の安全」と「旅客の利便」のために最も遭遇したり起こしたりしたくないものですね。しかし、「旅客」を送る仕事をする以上避けては通れない知識なので、しっかり覚えると同時に、開業するまではもちろん、引退するまで経験せずに知識だけで済ませたいものです。

  さて、「旅客」に対してというテーマで最後に「苦情処理」に関する問題を見てみましょう。これも受けたくないものですが、みなさんもきっと日々感じているように、十人十色、ウマが合うあわない、というように人間関係はとっても難しいものですね。どんなに丁寧懇切な接客を心掛けていても「苦情」を受ける可能性はありますよね。

 「苦情」の記録の保存期間は、「事故は3年、他は1年」の回でみたように「1年間」でしたね。これ以外の問題では、

   例題7 個人タクシー事業者は、氏名を明らかにした者から旅客に対する取扱いその他

     運輸に関して苦情の申し出を受け付けたときは、いかなる場合でも遅滞なく弁明しな

     ければなりません。

  これは私のオリジナル問題です。テキストの条文を見ないで解答してみてください。正解は×です。条文を正確に暗記している人には簡単だと思いますが、根拠条文では、

 旅客自動車運送事業運輸規則

  (苦情処理)

第3条 旅客自動車運送事業者は、旅客に対する取扱いその他運輸に関して苦情を申し出た者に対して、遅滞なく、弁明しなければならない。ただし、氏名及び住所を明らかにしない者に対しては、この限りでない。

(以下、省略)

  「ただし、」以下で、例外を設けています。それも、氏名「及び」住所、ということは、「あるいは」ではないので、「氏名」だけでも「住所」だけでもダメで、両方明らかにしない者に対しては、弁明しなくてもよい、という条文ですね。ほとんどは保存期間についての出題が多いですが、みなさんが実際に事業者になって、万一「苦情」を受け付けたとき、落ち着いて対処できるように正確に省令を理解しておきましょう。

  2回に渡って、「旅客」に対してという視点から考えてみました。ここまでの回で、「事業計画」を申請すること、「運送約款」に沿って事業を実施すること、「運賃及び料金」の制度を理解すること、「旅客」に対してどう向き合うかということ、つまりは事業の経営の大半について勉強してきました。次回は、こうして1年間や1年度、事業を経営した後に報告しなければならないことについて考えてみましょう。

  今回も、ご覧いただきありがとうございました。