みなさん、こんにちは!

 

 今回は、前回出てきた「事業計画」とともに重要な「運送約款」について考えてみましょう。前回、「運送約款」も「認可」が必要なもののひとつとして覚えましょうということでしたね。まず「約款」の辞書的な意味は、

 

保険や運送など不特定多数の利用者との契約を処理するため、あらかじめ定型的に定められた

契約条項。保険約款・運送約款など。(デジタル大辞林より)

 

 つまり、不特定多数のお客様に対して、事前に事業者側で決めておく契約ということですね。普通、契約書を交わす様な契約、例えば住宅や車を購入するときなどは、詳細な説明を業者から受けたり業者に求めたりして、最終的に契約書を交わして売買が成立します。我々も有償で旅客に輸送サービスを提供する契約をしている訳ですから、本来は双方が納得する契約条項が必要です。それをもし現場でやると....

 

「ご利用ありがとうございます。お客様をお送りするに当たり、これから説明致します契約条項について、ご納得いただけましたら目的地までお送り致します。まず、これからお話しする条項以外のことについては、法令の定めや一般の慣習で判断致します。私が 運送の安全確保のために行う職務上の指示には従っていただきます。(中略) 頂戴する運賃及び料金は、お客様の乗車時において地方運輸局長の認可を受け、又は地方運輸局長に届出をして実施しているものによります 。(中略)最後に、 お客様の故意若しくは過失により又はお客様が法令若しくはここまでお話ししてきた規定を守らないことにより当社が損害を受けたときは、お客様に対し、その損害の賠償を求めます。ここまでの契約条項に従ってお送りしますが、よろしいですか? 」

 

中略にした部分も「運送の引受や拒絶」「運送責任」など大事なものばかりですが、これらも含めてすべてを不特定多数のお客様ごとに説明して運送を行うのは、既に現実的ではないことはお分かりだと思います。そこで、事業者側であらかじめ次の基準で一定の契約条項を作成し、国土交通大臣の「認可」を受けることになります。

 

道路運送法 第11
(
運送約款)
第2項の第1号第2号

  公衆の正当な利益を害するおそれがないものであること。

  少なくとも運賃及び料金の収受並びに一般旅客自動車運送事業者の責任に関する事項が明確に

定められているものであること。

 

ここで根本的になぜ「認可」が必要なのか考えてみましょう。上記の基準があるとはいえ、旅客の了解を得て作成するのではなく、あくまで事業者側だけで作成できるので、いい加減な運送約款を決める事業者が出る可能性があります。なので、旅客が全く契約条項を知らなくても、「正当な公衆の利益を害するおそれがない」良識的なものか「少なくとも運賃・料金・責任」が明確に定められているかの審査を受けて「認可」してもらう必要がある訳です。

さて、事業者が一から運送約款を作成して「認可」を受けることが基本ですが、法律の専門家ならともかく、我々が一から法律的な契約条項を作成するのはなかなか困難です。そこで、上記の基準に適う「標準」的な「運送約款」を「国土交通大臣」が定めて「公示」してくれたものがあります。それを「標準運送約款」と言います。

 

 前掲条文の第3項には、

 

  国土交通大臣が一般旅客自動車運送事業の種別に応じて標準運送約款を定めて公示した場合(これを変更して公示した場合を含む。)において、当該事業を経営する者が、標準運送約款と同一の運送約款を定め、又は現に定めている運送約款を標準運送約款と同一のものに変更したときは、その運送約款については、第一項の規定による認可を受けたものとみなす。

 

とあります。つまり、国土交通大臣が公示した「標準運送約款」と全く同じ「運送約款」を採用したり、今まで運用していた独自の「運送約款」を「標準運送約款」と全く同じものに変更する場合は、改めて「認可」申請をしなくても「認可」を受けたことと同じことになります。簡単にまとめると、

 

※ オリジナルの「運送約款」→ 「認可」必要

※ 大臣公示の「標準運送約款」→ 採用・変更の届けをすれば「認可」同等

 

問題の出され方は前回の例題2でみたように条文の内容のまま聞かれるか、

 

 

例題 個人タクシー事業者は、新たに運送約款を定めることはできません。✕

 

 

の様に、独自の「運送約款」を定めることが出来るかどうかで聞かれるかことが多いです。また、前回で中心にみてきた「事業計画」と「運送約款」の内容を混同していないか問う問題がとても多いですが、これまでみてきた様に

 

※ 事業計画 = 営業所と車庫
※ 運送約款 = 運賃・料金・責任

 

と、要点を覚えておけば簡単ですね。

 

 例題  一般乗用旅客自動車運送事業の事業計画には、運賃及び料金の収受並びに事業者の

   責任に関する事項を定める必要はありません。 ○

 例題  営業区域内にある自宅を主たる事務所及び営業所としていた個人タクシー事業者が、

   営業区域内の他の場所に転居した場合、運送約款を変更する手続きが必要です。×

 

我々の事業に該当する「標準運送約款」は、「一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款」になります。これはテキストに第1条から第10条まで掲載されていますが、大変でもこの条文は全て内容理解して丸暗記してください。事前に取り決めたお客様との約束事ですから、個人タクシーを受験するしないにかかわらず、みなさんは、この約束に従って実際に日々乗務している訳です。きちんと覚えると、トラブルに遭遇したときなどに、より冷静に対処できるようになると思います。

また、「運賃・料金・責任」は当然、道路運送法や道路運送法施行規則、旅客自動車運送事業運輸規則に出てくる暗記すべき重要条文をお客様向けに丁寧調にした条文がほとんどなので、法令の重要条文を既に暗記している人にとっては、すんなり覚えられることでしょう。

 さて、今回は「運送約款」に関する出題について考えてみましたが、ここまで見てきた様に、お客様との約束事ですから、ひとつひとつの条項自体もとても大切なものなので、次回は公示されている「一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款」の勘違いしやすいところを中心に、具体的に条文の内容を解説する予定です。

  今回もご覧いただき、ありがとうございました。